peppermint-fk’s blog

日々の暮らしの中にあること

一瞬の記録、その写真がもつ力

 

日常を切りとる写真の魅力

一眼レフカメラデジタルカメラという機器を構えなくては

撮影できなかった写真の時代は随分前のことのように感じます。

スマホの圧倒的な普及で誰もが手軽に写真を撮ることができます。

その手軽さにより無数の写真が毎日撮られていることでしょう。

そんな現在でも写真の役割りとそこから生まれる写真の力は

写真が生まれてからずっと変わらないのではないでしょうか。

そういった視点で写真というものをちょっと考えてみました。

 

 

1 瞬間を切りとる力をもつ写真

今、その瞬間を記録する写真は、切りとられた瞬時の記憶を伝えてくれます。フランスの写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの「サン=ラザール駅裏、パリ(フランス,1932年)」の作品はまさに、一瞬の風景とそこに存在する人間の行動を同時に捉えた1 枚です。1950年代に紹介されたこの作品は大きな反響を呼びました。冬の雨上がりの冷たい澄みきった空気感を伝えてくる力もあります。彼自身、絵画とシュルレアリストに傾倒し、アメリカにおいて一年間アンドレ・ロートに絵画を学んだ後フランスに帰国し、写真をはじめました。彼が撮る被写体は、どこか絵画的でありモノクロが表現する光と影をその画面に美しく捉えているのは、絵画的経験が影響しているのかもしれませんね。

アンリ・カルティエ=ブレッソンによって撮影されたこの風景のように、私たちの日常にも瞬間的な出来事というものは存在します。その中から印象的な出来事や風景、人物といったものを形として残したいという行為にかられ、私たちはカメラを使って日常からその対象を切りとろうとします。ここに撮影するという人の行動が発生するのです。そして、同時にカメラの向こうには被写体と呼ばれる撮られる側が存在するのです。

 

 2 撮る、撮られるということ

撮る・撮られるという行動はカメラを媒介して初めて存在し、その意義も生まれます。子どもの頃、カメラのレンズを向けられると、ちょっとした緊張感を持ったり撮影向けの表情をつくったりしたものです。これは、シャッターが切られる瞬間に、自分というものが「写真」という形で残されることへの一種の構えであったり、その瞬間を捉えられた自分が、その後ずっと「写真」の中に存在し続けることへの緊張感であったのだろうかと思います。そしてできあがってきた写真を眺め、一喜一憂する感動も覚えました。

また、自分が被写体となった写真や、自分が撮影した写真を、自分以外の人に見てもらいたいという欲求も否めません。ここには、切りとられた一瞬の映像に込められた思いと感動が含まれ、その心象風景を伝えたい、見てもらいたいという二次的な行為が生まれた瞬間ともいえます。

 

3 あたたかさも過酷さも

ほとんどの人が、その時に見た素晴らしい風景や楽しかった様子、大事な人との感動的な出会い、そして時にはやりきれない一瞬を長期間に渡り鮮明に憶えておくことは至難の技といえるでしょう。その至難の技を写真はひとつの画面に瞬時におさめてしまいます。写真というものが一瞬の出来事を人に変わって記憶(記録)してくれるのです。

例えば上田義彦の写真集『at Home』は、カメラを通して家族との13 年間の軌跡を追っています。写真家として夫として父として、家族と向き合った彼独自の視点で捉えた記録写真です。彼の家族へ対する眼差しや家族との大切な時間、かげかえのないものと向き合った瞬間を伝える写真からは「見る側にも想像力と感受性を刺激させる力が写真にはある」と思わせてくれます。

それとは真逆のところにある、何もかもが見ていてやりきれない気持ちになる、決して穏やかでない写真も存在します。ロバート・キャパをはじめとする戦場カメラマンが撮った写真には、戦争の悲惨さや過酷さが一瞬にして封じ込められた記録です。そして、その裏側にある平和の尊さや平和への切なる願いが時を超えて訴えてくる写真でもあるのです。

 

4 切りとられた一瞬の役割りと力

長い年月を経ても、その一瞬の出来事を記憶する、記録するという写真の役割りは、私たちの日常にいい意味でも悪い意味でも、刺激を与えてくれます。自分が生きている時代に撮られた写真は、記憶をよみがえらせ、想い出に浸ることができます。また自分が生まれる以前に撮られた写真からは、当然のことながら自分が存在しえない時代の空気や人々の営み、歴史的なものを感じとることが可能です。

 

写真はこうした過去のある一瞬を切りとった時間を、記録として現在に正確に伝えるだけでなく、撮影した時の空気感や臨場感までも見る側に伝えてくれる力があるのです。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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東京国立近代美術館ホームページ/上田義彦著,『上田義彦写真集 at Home 』,リトルモア,2006年

 

 

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